岩岡ヒサエ 『ゆめの底』

岩岡ヒサエ 『ゆめの底』 (宙出版)
届かない声と残したい気持ち。これすごく良いです! 2005年に
宙(おおぞら)出版 より発行された
岩岡ヒサエ さんの作品。内容は、過去2002〜2004年に本人が発表した同人誌の作品と、この本を発行するにあたっての描き下ろしで構成されています。
特殊な写真の撮り方で、こう、反ったレンズを使って線を曲げた絵を作ったりすじゃないですか。魚眼レンズの反対みたいな絵ができるやつでね、あの見せ方がこの作品では多く使われてるんです。(この作品に限った事じゃなくて他の作品でもたくさん見られんですが、この 岩岡ヒサエ さんの独特な手法の一つなんでしょうね) 漫画の小さなひとコマの中でそういう見せ方をすると、そのひとコマの中の空間が異様な広さを帯びますよね。で、その空間のねじ曲げられた雰囲気が、この作品の中で描がかれている世界観と異様なマッチングを見せているんです。これだけでまず最初ヤラレました。この世でも、あの世でもない、どこの世界とも判らない空間の怪しさがものすごく出ています。
そして、もちろん、なんていうか、軽い熱でダルくてウトウト眠りにつきかけた時のようなテンションの話の内容も良いのですが、トーン貼りを一切使わず、ガリガリガリガリとペンのみで作品を仕上げているところも素晴らしいのです。自分はこれが好きなんでございます!トーンを使わないところ。本来できるんですよね、見せ方も、空気の出し方も、光と影も、強烈な陰影もね。
2007年02月13日 漫画 & 本 トラックバック:0 コメント:0
COMITIA 79 (3)
信吉(信吉茶屋) 『役立たずの右手』
作者
信吉 さんの世界観が丸出しだだ漏れになっているような一冊です。この本は今回の COMITIA79 での新刊ではなく、昨年末の コミックマーケット71 で新刊として発表されていたものです。本のサイズがなんとA4の半分の半分の半分、つまりA7サイズの小さな誌面の中に、(たとえば思春期とかに)自分の欠点が辛く悲しく負の方向でしか考えられないような悩みの中にあり、そんな思い詰めた中の暗い影に触れなおすような、また一つの弱さの形をあえて見直すような作品です。
ホントにこの本の中に書き込まれている「痛さ」が深刻な程痛烈で、またそれがとても良いのです。そういえば、その昨年のコミケ当日、この
信吉茶屋 さんのスペ−スヘ行ってご本人さんと軽く会話をさせて頂いた時に「きのう1日で作りました〜!」などとおっしゃってたんだけど、この本の世界を1日でカタチにする彼女の右手はそういう意味ではまたホントにスゴイなと。
2007年02月12日 漫画 & 本 トラックバック:0 コメント:2
COMITIA 79 (2)
先日の
COMITIA79 で見つけた、その作者じゃないと描けんような良い空気のニジミ出とる同人誌を紹介します。作者の脳みその中に棲んでいる想像(または妄想)の世界は時に一人歩きをし始めますね。
もとやままさこ(RADIO MOON) 『cafe cafe』
優しくて柔らかい世界観とタッチにもってかれます。 この
RADIO MOON さんというサークルを最近知って、持って来られていた作品を全種類大人買いしてしまったんだけど、何冊か買った中でズバ抜けて良い世界が作者からズルリと出てきていた作品です。ほのぼのとした世界だけじゃなく、最後の4ページでチクっと決定的な一打を残してくれるんですよね。ここがすべて。
もとやままさこ(RADIO MOON) 『時の音』
罪と呪いから徐々に解放されていくっていう長い時間感覚の世界を、狭い時計台を舞台に展開するショートストーリー。この作者さんの描く空気感はホントに綺麗で気持ちが良いです。そういえば、昨年11月の COMITIA78 の時に
楽書館 さんというサークルの発行した『らくがき帖9』という本に、この
もとやままさこ さんの「金穂原」という作品が収録されていたんだけど、たった4ページの作品ながら、初めて彼女の作品を読んだ自分は、とても綺麗で切ない空気がいっぱいに詰め込まれたその世界観に軽くもっていかれたのでした。
2007年02月09日 漫画 & 本 トラックバック:0 コメント:0
COMITIA 79

最近一段と注目度を増してきている創作漫画の同人誌即売会イベント
COMITIA79 に行ってきました。このイベントは「創作」ってコトで、基本的に登場人物、設定などすべてにおいて完全オリジナルの漫画のみだけが売られるイベントであり、たとえどこかで見た事があるような髪型のキャラクターがいたり、清楚でキリスト教でロザリオな女学校の話があったとしても、それはリスペクトであり、そしてオマージュでありこそすれ、すべてはオリジナル作品なワケでなんら問題無しです。
行ける時はできるだけ行っているこのイベント、当初自分がこの行き出した頃は、イベントの開場前に長蛇の列ができて並んで入場するっていうようなカンジのものではなかったんだけど、今回はかなり長い列が入口付近からのびていて、安易なパロディよりも「創作」というものへ目を向ける傾向が強まってきているのかなという印象を少しずつ受けております。人気の商業誌に連載を持つ作家さんが参加してる事もあるので、それ目当てでたくさん人が集まっているって可能性もあるんすけどね。
とはいえ、この「描きたいものを描いている」っていう作家さん方の姿勢とか、そこから出来上がってくる創作物がたまらなく面白くて大好きなんです。別に描いてる本人がお金出して本を作ってる訳だからまったく自由にやっちゃっていいんですよね。だからスタイルはどうであれ、面白いものは面白くて、合わないものは合わなくて、自分がどんな作品を求めてるのかがハッキリ判るというのもこのイベントでは面白いトコロであるような気がします。商業誌作家よりも趣味だけで描いている方の漫画の方が何倍も面白い事が当たり前にあるから、良いと思うものは自分でどんどん探し求めていくようになるんです(だと思います)。
そんな今回の
COMITIA79 で個人的に良かった作品を何回かにわけて紹介したいと思います。
moe (
山猫料理店) 『霧魚(キリオ)』
少年と鮫とガンジャの話。って書くと恐くて悪そうなイメ−ジも出てくるけど、なんていうか「傷」がテーマな話。ちょっと重い雰囲気なんだけどそれがまた良くて、70ページもの長い展開中もダレる事なく一定のテンションを途切れさせる事無く終わってくれる作品。絵も綺麗で、ガリガリ手でのみ描いてト−ン貼り一切無しっていうのも個人的には好印象でした。

浦崎力 『いいくにつくろう』
コレはヤバい!(笑) もう登場人物のかなりの一方的な思い込みだけで極端にストーリーが進みまくります。 この作者さんはたぶん本人の中での漫画の面白さの形ががだいぶきてる方なんだと思います。だからこの作品に触れるには読み手の好みが強く求められるんだけど、ハマる人にはかなり重度な傑作である事は保証できます。しかもかなりペ−ジ数があってきちんと印刷所製本されてて100円なんて!
2007年02月09日 漫画 & 本 トラックバック:0 コメント:0
二階堂正宏 『のりこ』

二階堂正宏 『のりこ』 (新潮社)
ストイック・ミニマル・バイオレンス!!
連載中止、販売自粛だって、なんだって、そりゃそうでしょ。っていうか、ミニマルすぎる!さらにストイックすぎる!そしてビルドアップ!ってことは、コレなに、カッコ良すぎる!!田中フミヤのトラックなんじゃねーのってくらいに「ひたすら」。そして救いはありません。パターンの中に変幻を。
「よく出版してくれんもんだと思ったんですけど」って作者本人が言うくらい、とんでもないブラックな内容なんだけど、まさにそこが面白い。洗練されてるからなんだろう。「どこも連載してくれないんで、こっそり描きためてた、完全描き下ろし特別オリジナル作品です」という事らしく、納得する程の非連載向き作品なのに 新潮社 さんってば心の広い会社だな〜。
「ナンセンスと現実は紙一重であります!」まったくです。みんな読むな。いや、読め!責任持てないけど。
2006年11月25日 漫画 & 本 トラックバック:0 コメント:0
COMITIA 78
オリジナルであるという事。"0" から "1" を捻出する事。他人の影響から一歩身を引ける事。

先週末の12日、ビッグサイトで行なわれた
COMITIA という自主制作コミックの即売会へ行ってきました。自主制作コミック、すなわち同人誌、それも既存の作品からの二次創作ものではなく、完全オリジナルの創作同人誌のみを発表するイベントです。
すでに設定された世界観から引き出してくる内容とは違い、100%描き手の引き出しのみから生み出さないといけない漫画ということは、いわゆる通常流通している漫画誌に掲載されているものと同じ種類の漫画ということになります。しかしそれを、こういった商業誌とは違う場で苦労し自分なりの漫画を発表している場と人たちがたくさんいるというのがとても面白いと思うのです。商業的な利益を求めずに作品を発表しているっていうのが引き付けられる理由のような気がします。
PCを使ってできることが増えてくると、誰でも簡単にある程度のものを作りだせるので、物を作る(創る)人たちもだんだんと増えてきます。さらに自宅で使えるプリンターが良くなれば、印刷会社へ製本を依頼しなくても自分で本を作り出すことができますもんね。でもここから先、ちょっと手を伸ばせばたくさんの便利なものとノウハウが手に入る中、向けないといけない目先は「たくさんの情報の渦」ではなく、もっと違うところのハズじゃないっすかね。
そんなたくさん個性的な作家が集まるこのイベントの中、個人的に追いかけているお気に入りの作家さんの作品を一冊紹介します。

片栗 [クルのトーチカ] 『暮れる街』
クルのトーチカ というサークルが今年5月に発表した創作同人誌です。なんていうか、たとえば、上手く社会(他人とか)と折り合うには潜めておかないといけない心の底の暗い影のような部分が誰にでもあると思うんだけど、そういうものを登場人物が思い感じたりする姿や心象を描いていて、客観的にそれを見せる事で読む側が投影した自分とダブらせてしまう様な、不思議な空気感をもった一冊です。
スパッときれいにオチのついた作品も良いは良いんだけど、そういう作品はその中だけで世界が完結しまいがちになりますよね。でも明確にオチをつけずに、読み手に最後のコマの後「コイツこの後どうなるんだろう.....」って思わせると、その後を考えさせられる事で作品の最後が漫画の中だけで終わらずに、読んだ人数分広がっていくようになります。この本を読むと、そういう話しが本当に面白い作品なんじゃないかなって思わされますね。
→
COMITIA オフィシャルサイト→
クルのトーチカ サイト
2006年11月19日 漫画 & 本 トラックバック:0 コメント:0
オノ・ナツメ 『LA QUINTA CAMERA 〜5番目の部屋〜』

オノ・ナツメ 『LA QUINTA CAMERA 〜5番目の部屋〜』 (小学館)
「自分の国で楽しみをみつけられない奴らなんて、つまらないだろ。」
なかなかね、自分にとって「意味」のある内容を含んだ漫画に出合える機会は少ないですよね。漫画だけじゃなくても、何かしらの作品でいいんだけど、その作品を読んだり見たりすることでちょっとでも考えが変わるくらい影響力のあるものに出会えることは貴重ですね。
オノ・ナツメ さんの作り出す空気は暖かくて、ぼんやりとたゆたう感じ。定規でピシッと真直ぐな線をひかない様なフリーハンドな絵のラインが、不透明かつ温もりのある質感を出しているんだろうけど、これが描かれた何気ない日常の風景と合わさると、何ともいえないくらい気持ちが良い作品になるんです。
この本は、webコミックの「
comic seed!」誌に以前掲載されていたものを中心に収録された一冊で、小学館は
IKKI COMIX より発行されたものです。
→
IKKI 公式サイト [イキパラ]
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2006年11月19日 漫画 & 本 トラックバック:0 コメント:0